顧客インタビューの進め方とコツ|深掘りの技術・実践編
質問リストが台本だとすれば、この記事は演出の話です。同じ20問でも、進め方ひとつで「感想文しか取れない取材」と「数字とエピソードが揃う取材」に分かれます。事前準備から当日の相槌、沈黙、脱線の扱いまで、進行の技術をまとめました。質問そのものは「質問項目20選」をご覧ください。
事前準備: 「宿題」の渡し方で当日の濃度が決まる
取材の成否の半分は、当日より前に決まっています。依頼が確定したら、次の2つを渡してください。
- テーマの大枠(5項目) — 「導入前の状況/選定の経緯/導入時の工夫/効果/今後」程度の粒度。全質問は送らない(準備された回答は具体性が落ちます)
- 数値の宿題 — 「導入前後の工数・件数など、分かる数字があれば当日までにご準備ください」の一文。これがあるだけで、効果パートの質が段違いになります
あわせて所要時間(60分)と録音する旨を事前に伝えておくと、当日の冒頭説明が短く済みます。
当日の冒頭2分で言うこと
- 「記事を正確に書くために録音します。公開前に必ずご確認いただきます」
- 「うまく話す必要はありません。編集で整えますので、思いついた順でどうぞ」
- 「言いにくい話が出たら、その場でオフレコ指定してください。記事には使いません」
3つとも、相手の「失言したらどうしよう」という警戒を解くための宣言です。警戒が解けた取材は、脱線が増え、脱線から本音と数字が出ます。
深掘りの相槌5型
質問リストの合間で使う「もう一段掘る」ための定型句です。取材が感想文で終わる人は、この一往復を省略しています。
| 型 | 使う場面 | 例 |
|---|---|---|
| 数値化 | 形容詞が出たとき | 「大変だった、というのは時間にするとどれくらいですか?」 |
| 場面化 | 抽象的な答えのとき | 「直近でそれが起きたのはいつですか? その日のことを教えてください」 |
| 比較 | 効果の話のとき | 「同じ作業を導入前にやっていたら、どうなっていましたか?」 |
| 他者視点 | 話者以外の変化を聞くとき | 「現場の皆さんは何と言っていますか?」 |
| 復唱確認 | 重要な数字が出たとき | 「15人で3日、が6人で半日になった、で合っていますか?」 |
特に復唱確認は必須です。ここで確定させた数字が、そのまま記事の見出しになります(構成テンプレート参照)。
沈黙は5秒待つ
質問のあと相手が黙ると、聞き手は不安になって質問を重ねたり言い換えたりしがちです。これが一番もったいない。考えている沈黙は、良い答えの前兆です。心の中で5秒数えてください。急かして出た模範解答より、考えて出た実感のほうが記事になります。
脱線は5分まで泳がせる
想定外のエピソード、他部署の話、過去の失敗談——脱線は宝の山です。予定の質問を消化することよりも、「その話、詳しく聞かせてください」の価値が高い場面は多くあります。目安として5分まで泳がせて、実りがなければ「本題に戻りますね」で切り替えます。60分の取材で予定質問を2〜3問捨てる勇気が、記事を平凡から救います。
オンライン取材の注意点3つ
- 録画は開始直後に確認 — 「録画中」表示を口頭でも確認。取材後に録れていなかった事故は取り返しがつきません
- 相手の通信断に備えて要点を復唱 — 重要な数字の直後に復唱確認を入れておくと、万一音声が乱れても文字起こしで拾えます
- 画面共有で製品画面を見ながら話してもらう — 「普段どう使っているか」は口頭より画面共有のほうが具体的な発言を引き出せます
取材のあとの工程へ
良い取材ができたら、あとは録音を記事にする工程です。手作業なら構成テンプレートと無料キットを。ジレイスタジオなら、この取材録音をアップするだけで、発言根拠つきの記事・引用カード・営業スライドまで自動で仕上がります(β版無料)。質問そのものに迷いがある方は、まず質問項目20選をどうぞ。
よくある質問
お客様の緊張をほぐすにはどうすればいいですか?
最初の質問を「答えが決まっている簡単なもの」(事業と役割の紹介)にすることと、冒頭で「うまく話す必要はまったくありません。編集で整えますので、思いついた順で大丈夫です」と宣言することです。記事の出来を相手の話し方に依存させない姿勢を先に見せると、場が緩みます。
インタビューは1人で回せますか?
回せます。録音があるためメモ係は不要です。ただし初回は、聞き手とは別に「数値が取れたかをチェックする係」がいると安心です。1人で行う場合は、質問リストの効果パートに「導入前の数値」を事前に書き込んでおき、当日は差分を聞くことに集中してください。
オンライン取材でカメラはオンにすべきですか?
聞き手側は必ずオンにしてください。相手の表情が見えると深掘りのタイミングが掴めますし、こちらの相槌が見えることで相手も話しやすくなります。相手側のカメラは任意で構いません(音声さえ録れれば記事は作れます)。